『アトミック・リーディング: 読むことと書くことから考える読書術』
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メモを書きながら本を読んで理解する。「早く読まない」ことを前提にしたデジタル時代の読書術。
残した読書メモはZettelkasten(ツェッテルカステン)やEvergreen notes(エバーグリーンノート)の方法論で自分のための永久保管庫とし、ノートを使って面白かった本とついて語れることを目指します。
読書の価値は、情報の消費ではなく自己の知識ネットワークの構築。AIの登場に伴い、私たちには「知能」ではなく「知性」が求められるようになりました。
本という「知」に触れ、そこからいかにして知性を獲得していくか。「アトミック・リーディング」は、そんな知性を育むことについて考える方法です。
▼目次
■はじめに
■第一部 いかにして読書するか
十時間かけて読んだ本の感想が「すごい」だけだった
「語れる」ことを読書の目標に設定する
読書とは練習によって身に付ける「スキル」である
答えを丸写ししてもなにも語れるようにならない
早く読むことを目指さないし読んだ冊数を自慢しない
並行読書のススメ
並行読書によって「自分の興味」がわかる
熱量が高いときに読めるだけ読む
■第二部 読んだ本について書く
まずはなにを読んだかを記録しておくようにする
おもしろいと思ったことを自分の言葉でまとめる
目次を意識して見出しと共にメモを残す
他人が読んでも意味が分かるように文章を書く
メモの基本は〜とは〜である
慣れないうちはメモは多すぎるくらいでいい
読んだ本について書く時間を確保する
■コラム 二回読んで二回目に書く
■第三部 書いた読書メモを活かす
読書メモをテーゼの形式で整理する
文章を書き直しながらテーゼを組み立てる
細かく分解することで自由に組み合わせができるようになる
一つのことにすることと要約することは異なる
つながりが見つけられると読書は何倍も楽しくなる
振り返る機会がないと記憶に残らない
メモを振り返ることでさらに読書の価値が上がる
「振り返る」とはどんなことをするのか
どんな頻度でメモを振り返るのか
細部がクリアになると全体がよりはっきりわかるようになる
振り返りを繰り返して「語れる」ようにする
■おわりに
■■■ はじめに ■■■
読書という言葉を聞くと、多くの方は「本を読む」ことを想像するでしょう。
もちろん、漢字の意味をひも解けば「読書」とは書を読むことであり、辞書を引いても大抵は「本を読むこと」と書かれています。しかし一冊の辞書の定義だけで諦めず、複数の辞書を調べてみると、精選版日本国語大辞典のなかに「読書(よみかき)」という項目が見つかります。ご想像の通り、その項目には「文字や文章を読むことと書くこと」という説明が書かれています。
歴史の観点から見ても「読書」という行為は大きく変化しています。現在では読書といえば声を出さず、目で書かれている文字を追う黙読が当たり前ですが、これが読書の当たり前になったのは活版印刷が普及してからのことです。日本だと、黙読が当たり前になったのは明治時代以降だと言われています。
「読書」という言葉だけを見ると、今私たちが行っている読書が当たり前のことのように感じられますが、読書も時代と共に変化してきています。
21世紀に生きる私たちには、大きな時代の変化が表れています。個人がコンピュータ(スマートフォン)をいつでもどこでも持ち歩けることは当たり前になり、さらにそれらに質問すればどんな答えも返ってくるような時代にまでなりました。
こうした大きな時代の変化に合わせて、今まで当たり前だと思っていた読書を考え直してみよう。これまでとは一味違う読書について考えていこうというのが本書のテーマです。
本書のタイトルにも含まれる「読むことだけが読書ではない」という考え方を軸に、一冊の本を通じてより多くのことを学び、より長期間にわたって、より深く楽しみながら、読書という行為をこれまで以上に「楽しくて役に立つ」ものに変えていくことを目標とします。
そのために、本書ではまず、「読書」とは「本に書かれた文字を黙読すること」だけではなく、「読んだり書いたり」する行為だと考えます。
たとえば現在では、読んだ本をより長期間にわたって楽しむための方法として「読書メモを残す」という方法が簡単に利用できるようになりました。本が羊皮紙に書かれた貴重なものだった時代には、本に書き込みをするというのは想像すらされていなかったでしょう。メモを残そうにも、紙を手にいれることも困難です。今はメモを用意したり、本に文字を直接書き込んだりすることはだれでもできるあたり前のことになりました。そこからさらに時代は進み、紙とペンがなければかけなかった読書メモも、スマートフォン1台あれば「写真」や「声」だけでメモを残すことすら可能です。
一冊の本を読むだけでなく、読んだ本について読書メモを残しておいたほうが得られるものは多い。この意見は多くの人に同意していただけるものだと思います。それと同時に、読書メモを残すことは面倒だからなかなか実行できない、という感想を持つ方が大半ではないかとも想像します。
世にある多くの読書本は、いかに楽をして得られるものを増やすかというアプローチで解決を目指しています。本書では少し目線を変えて、読書に対するイメージを変えることで読書メモを書くことが苦にならないようにすることを目指します。
たとえばまず、読書メモを書くことがなぜ面倒だと感じてしまうのか。その理由の一つは、おそらく大半の人が読書メモを書くという行為は「読書ではない」と考えているからではないでしょうか?
本を読むことは「読書」だけど、読んだ本について読書メモを残すことは「読書」ではない。だから、もっとたくさん「読書」をするためには読書メモを書く時間なんてない。
この考え方を少し変えて、もしも「本を読むこと」「読書メモを書くこと」「読書メモを振り返ること」までがすべて「読書」なのだとしたら?
本を読んで、読書メモを残し、読書メモを振り返ってようやく「本を読み終わった」と考えてみたら?
こうなると、本を読み終えるためには、読書メモを残すしかありません。
もちろんこの考え方は、読書メモが難しいという根本的な問題は、なにも解決できていません。変わるのは気分だけです。
ですが、人間の行動は環境や気分などに大きく左右されるというのもまた事実です。読書に対するイメージが少し変わるだけで気分が変わり、読書メモを残すことが苦ではなくなることも十分に起こり得ることです。もしも今、こうした考え方があると知ることで、読書への向き合い方が少しでも変われば、イメージを変えるだけでも十分に意味があることだと言えるでしょう。
本書ではこのように、様々な観点から読書観を変えていき、それをきっかけに皆さんの読書という行為を変化させていくことを目指します。
読書メモを残して、それをあとで振り返ればメモがあると読書はもっと楽しくなる。そうだとわかっていても、読書メモを残すのは大変で面倒でやりたくない。基本的に、人間とは矛盾した存在であり、いつも信念に基づいて行動ができるほど一貫性がある存在ではありません。気分が変わればできることもできなくなるし、あるとき突然やる気が出て新しいことを始められることも起こり得ます。
わたしたちは、こうした矛盾を受け入れた上で、それでもできることをやるしかありません。こうした行動のすべての根底にあるのは「読書は楽しいものだ」という感覚です。これを読んでくださっている皆さんは、おそらく一般的な方よりたくさんの本を読んでいて、私と同じように「読書は楽しいものだ」という感覚をお持ちの方々だと思っています。
重要なのはこの「読書は楽しいものだ」という感覚です。その気持ちさえ忘れなければ、どんな読書術も楽しんで実践が可能です。
読書メモを残すことは、効果はあると思っても、なかなか実行できない。私もずっとそう思っていました。まずはそんな私が、なぜ「読書メモを残さないのはもったいない」と感じるようになったのか。
そうした経緯をお話しすることで、少しずつ皆さんにも「読書メモを残すことの楽しさ」を知っていただき、実践の助けになればと思います。